Box、Microsoft 365、Snowflakeを適材適所で活用!非構造化データの基盤にBoxを据え、現場の暗黙知をAI時代のナレッジ資産へ転換する
- 業種:金融・保険
- 企業規模:5,001名〜
- 課題:AIの活用
- 課題:ファイルサーバー老朽化・容量ひっ迫
- 課題:業務プロセスの自動化・効率化
- 製品名:Box Shield
- 製品名:Microsoft 365連携
- 製品名:Box AI
Boxを導入して複数システムに分散していたコンテンツの一元管理と、組織横断での利活用を推進。アクセス制御や監査等の機能を活用し、ガバナンスの高度化を図る
BoxをMicrosoft 365やSnowflakeと連携させ、プロジェクト単位や業務単位での情報管理・運用にも活用。各種業務アプリケーションと連携させ、業務全体の利便性を向上
AI-Readyな非構造化データの基盤としてBoxを活用し、さまざまなファイルコンテンツから業務のコンテキストをセキュアに抽出。現場の暗黙知を形式知へ変える
Box AI Agent in Copilotを活用し、Microsoft 365 CopilotとBoxをシームレスに統合。Copilotの画面からBox内のコンテンツを検索・分析できる環境の整備を進める
1927年設立の三菱UFJフィナンシャル・グループの中核を担う信託銀行である三菱UFJ信託銀行株式会社(以下、三菱UFJ信託銀行)。信託の専門性を活かし、資産運用・管理、不動産、証券代行など幅広いソリューションを提供するとともに、グローバルビジネスや新規ビジネスの創出にも取り組んでいます。「人をつなぐ。未来をつなぐ。」のもと、金融ソリューションを通じて社会や経済の基盤を支え、長期的な価値創造に貢献しています。
三菱UFJ信託銀行は、AI活用の高度化に向けて情報管理基盤の再設計に取り組んでいます。同社では、ファイルサーバーの容量逼迫や管理構造の複雑化、非構造化データ活用方針の未整備といった課題を背景に、データの格納・活用の在り方を見直してきました。
こうした課題への対応として、AI-Readyな次世代のコンテンツ管理プラットフォームとしてBoxを採用し、Microsoft 365やSnowflakeと組み合わせた適材適所の構成により、非構造化データを軸とした全社的なデータマネジメントの高度化を図っています。
AI活用に向けて情報管理基盤を再設計
三菱UFJ信託銀行はDX戦略実現の柱に「業務基盤の強靭化」を掲げ、システムのモダナイゼーション、サイバーセキュリティ、オペレーショナル・レジリエンス、AI活用などを含む総合的なアクションプランを全社的に推進しています。この中で、特に重視しているテーマの1つがAI活用です。
同社の業務は少量多品種という特徴があり、個別業務ごとに高い専門性が求められます。そこで重要となるのが、経験に基づく判断やリスクの見極め、さらには複数のステークホルダーに対する利害関係の理解や説明責任の遂行といった、現場に蓄積された「知」です。
「これらの多くは『非構造なファイルコンテンツ』に宿っています。当社のAI戦略では、こうした暗黙知を形式知化し、編集して意味づけを行い、組織の価値創造力へ転換していくことを目指しています」(執行役員 デジタル戦略部長 多木 嘉一氏)
三菱UFJ信託銀行株式会社 執行役員 デジタル戦略部長 多木 嘉一氏
このようなナレッジマネジメントを実現するには、その土台となるデータマネジメントの設計が欠かせません。中でも重要なのが、非構造化データ、とりわけファイルコンテンツに埋もれた情報をAIが活用できる状態へと整理することです。
しかし、同社では非構造化データを管理・活用するうえで、「ファイルサーバーの容量枯渇と高額な維持費」「フォルダ構造・アクセス権構造の複雑化」「AIによるコンテンツ活用方針・他システム連携方針が未確立」という課題を抱えていました。また、近年は画像・動画ファイルの増加やバージョン管理の影響により、データ量が急速に増加しているという問題もありました。
「当社ではSharePoint Online(以下、SharePoint)も活用しており、Microsoft 365 CopilotやPower Platformとの親和性の高さは大きな強みです。一方で、コンテンツ量の増加や過去バージョンの保持などを踏まえると、全社的な非構造化データの蓄積基盤としては、容量や運用コストの見通しを含め、用途に応じた最適な配置を検討する必要がありました」(デジタル戦略部 DX 統括推進室 基盤・運用企画グループ 課長 三宅 浩亮氏)
三菱UFJ信託銀行株式会社 デジタル戦略部 DX 統括推進室 基盤・運用企画グループ 課長 三宅 浩亮氏
こうした背景から、同社はデータの格納場所や活用方法、ストレージ管理を含めた非構造化データ戦略の再設計を急務と判断し、情報管理基盤の抜本的な見直しに着手。全体最適の視点でAI-Readyな次世代基盤の構築に乗り出したのです。

Boxを非構造化データ活用基盤の中核に
次世代の情報管理基盤の構築に向けて、まず取り組んだのがデータの保管・共有のあり方の見直しです。容量や運用面で多くの課題を抱えていたファイルサーバーは選択肢から外し、2020年頃から社外共有に利用していたBoxと、プロジェクトベースのファイル共有などに活用していたSharePointを候補として比較検討しました。
「Boxはアクセス権がシンプルで容量無制限、SaaS連携性に優れています。一方SharePointはMicrosoft 365 CopilotやPower Platformとの親和性が高く、それぞれの特長を活かしたいと考えました」(デジタル戦略部 DX 統括推進室 基盤・運用企画グループ 上級調査役 髙谷 祐介氏)
三菱UFJ信託銀行株式会社 デジタル戦略部 DX 統括推進室 基盤・運用企画グループ 上級調査役 髙谷 祐介氏
そのうえで「利用(アプリケーション)→蓄積(データレイク)→収集(データソース)」という、目的から逆算してプロセスを設計するデータマネジメントを重視。そして「目的に応じて最適な置き場所は異なる」という考えのもと、全データを一カ所に集約するのではなく、Box、SharePoint、Snowflakeを適材適所で活用する方針としました。
Boxに関しては、少量多品種の業務や利益相反管理、職務に応じた権限運用を実現し、情報の適正管理と柔軟な共有を両立できる「アクセス管理」の面と、文書や資料などに散在している暗黙知の形式知化を進められる「ナレッジ活用」の面で特に価値が高いと判断。2026年3月に、ファイルサーバーを含め複数システムに分散していたコンテンツの一元管理と組織横断での利活用推進、さらにはAI活用を見据えたコンテンツ管理基盤としてBoxを採用し、全社で利用開始することを発表しました。
「Boxはコンテンツ管理基盤としてだけでなく、SharePointやSnowflakeと連携させることで、プロジェクト単位や業務単位での情報管理・運用にも活用していきます」(髙谷氏)
BoxとMicrosoft 365、Snowflakeを最適配置
「現在、当社では三菱UFJフィナンシャル・グループの共同案件として、OA環境の刷新を行うプロジェクトを進めています。この新たな環境では『KOHAKU』と呼ばれる次世代端末を利用し、Microsoft Entra IDで認証を行って、インターネット経由でMicrosoft 365やBox等のクラウドサービスへセキュアかつスピード感を持ってアクセスする構成としています。次世代の環境を前提として、Boxは『容量無制限』や『アクセス権のわかりやすさ』の強みを活かしてコンテンツを管理する基盤として採用しました。メールやTeams、SharePoint、OneDriveといったMicrosoft 365の各種サービスはコミュニケーションの基盤として、またCopilot/Power Platform活用の基盤として引き続き活用を続けていきます」(三宅氏)
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「エンドユーザー目線では、録画データの保存やCopilot/Power Platform活用はOneDrive、プロジェクトベースのファイル共有やCopilot/Power Platform活用はSharePoint、社内ファイル管理や外部共有はBoxといった使い分けになります。そのため利用に迷いが生じる可能性を議論しましたが、BoxはBox DriveによりSharePointやOneDriveと同様にWindowsのエクスプローラー経由で利用できるため、特別な意識を持たずに使い分けられるものと考えています」(髙谷氏)
AI活用については、Microsoft 365 Copilotを中核に据え、各種AIエージェントを活用する方針としています。Boxに集約したコンテンツについてはBoxが提供するBox AI Agent in Copilotを活用してCopilotとBoxをシームレスし、Copilotの画面からBox内のコンテンツを検索・分析できる環境を構築する構想があります。
さまざまな工夫で利便性と安全性を向上
Boxの展開は、段階的に進めていく予定です。2026年6月から全社利用を開始したあと、2026年度中を定着・移行準備期間に位置付け、Boxへのデータ移行は2027年4月から着手(SharePointおよびOneDrive内のコンテンツは移行対象外)。約1年半をかけてプライベートクラウド上のOAファイルサーバーからデータ移行を終えたあと、ファイルサーバーを撤廃する計画です。なお、ExcelマクロなどのEUC系ファイルについては、パス変更などの影響が生じる場合も考慮し、EUC専用のファイルサーバーも準備します。
さらに移行にあたっては、運用負荷の軽減とガバナンス強化を両立するためのさまざまな仕組みも整備しています。部門ごとの利用実態を踏まえた移行計画、利用者向けの周知・教育、EUCファイルへの影響確認を段階的に進めます。
まず、Boxで利用するIDは人事システムと連携して自動作成する仕組みを構築。個人用フォルダの作成や権限付与、部署フォルダへのアクセス権設定までを自動化し、IT部門の運用負荷を大幅に軽減します。
また、Box Shieldによる強固なセキュリティ統制により、金融機関に求められる厳格なガバナンスと利便性の両立を図っていきます。具体的には、Box Shieldの分類ラベル機能を活用し、部署フォルダや外部共有フォルダに格納されたファイルに「取扱注意情報」ラベルや「社外共有可否確認」ラベルを付与して社外ユーザとの共有を自動的に制限。「社外共有可否確認」ラベルが貼られたファイルは管理者確認後に「社外共有可」ラベルへ手動変更することで共有を許可するなど、ファイルごとの機密性に応じたアクセス制御を実施し、外部共有の安全性を高めていきます。
さらには、 Salesforce上にワークフローを構築し、申請・承認・履歴管理を伴う形で、Box上のフォルダ作成、権限付与・変更・削除、ラベル付与を自動化することも検討しています。
AI活用を促進する多角的な取り組み
こうした次世代の情報管理基盤の構築と並行し、同社は「現場主導の変革」も重要な要素と位置づけ、両輪で取り組みを進めています。
「AIネイティブ企業を目指すうえでは、ツールの導入だけではなく、“自らやってみる”というオーナーシップカルチャーが必要です。オンラインサロンやラジオ番組、公募投票型表彰制度、AI祭、全社横断コミュニティなどの施策を起点として、知る(報告レポートや報告会)→使う(生成AIやPower Platformの活用)→つくる(トレーニングプログラム、スキル認定等)』という『つくる楽しさ・できる喜びループ』を回し、現場の全員の力を引き出していきます」(多木氏)
また、現場でのAI活用が進むとガードレールの設定が必要になりますが、AIエージェントはシステム開発領域(三菱UFJトラストシステム)で先行的に環境整備を行い、業務利用ではMicrosoft 365基盤上でガバナンスを確保した形で導入し、活用領域を広げていく考えです。
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さらに、業務にAIを組み込むにあたり、“人とAIの役割分担”を明確にし、全社的な変革に取り組んでいる点も特徴的です。
「仕事は、上流の問題認識・課題設定から始まり、中流の課題整理・対応策検討、下流の合意形成・実行・定着へと流れていきますが、AIはこのうち中流領域を中心に、情報整理や分析、選択肢の提示などを通じて意思決定を支援する役割を担います。そのため、人に求められるのは、上流にあるそもそもの問いを立て、中流の決定、下流の対話・伝達を通じて決定事項をやりきることです。装備の道具のみならず、人の改革という観点を交え、全体の変革プログラムを推進していきます」(多木氏)