優秀な人材が、単純作業に才能を浪費しています。定型的な文書を手作業で処理するのに何時間もかかり、標準契約書の法務レビューに数週間を費やし、システムにデータを手入力するのに膨大な時間を費やしています。セキュリティ担当者は、アラートを1つ1つ確認することに追われています。
これは、リソースの問題でも、優れたテクノロジーの不足でもありません。「Boxのお客様と実際に話をすると、AIに問題があるわけではなく、 データに問題があるとよく言われます」と、BoxのCTO ベン・クス(Ben Kus)は言います。
![]()
Boxのお客様と実際に話をすると、AIに問題があるわけではなく、 データに問題があるとよく言われます。
最高技術責任者(CTO) ベン・クス(Ben Kus)
ベンは、何百もの企業が同じ壁にぶつかるのを目の当たりにしてきました。彼らはAIパイロットに何百万ドルも注ぎ込んで、 PoC(概念実証)を行い、 さまざまなツールを検証しています。しかし、本番展開には至らないのです。
Intelligence Squared Podcastの最新エピソード「Practical AI Implementation in the Workplace: Beyond the Hype(職場における実践的なAI導入: ハイプを超えて)」では、ベンがAIをめぐる理論的なハイプから、AIパイロットを成功裏に本番展開するために取るべき実践的で実行可能なステップへの重要な転換について語っています。
主なポイント
-
AIの失敗は、データの失敗です。ほとんどのAIパイロットは、AIがレガシーシステムに閉じ込められている重要な企業データにアクセスできないために停滞します
-
派手なツールではなく、データ基盤から始めましょう。AIを導入する前に、データの保存場所を調査し、ガバナンスを構築しましょう
-
小さな成功の積み重ねが、変革へとつながります。ボトルネックを1つ選び、実際の指標を追跡し、そこから勢いをつけていきましょう。
AIパイロットが失敗する本当の理由は、テクノロジーではなくデータ
すべての経営幹部は、AIで業務ワークフローを変革できることを知っています。しかし、パイロットやPoC(概念実証)に何百万ドルも投資したにもかかわらず、ほとんどの企業が実験段階から抜け出せず、AIの取り組みを個々のユースケースを超えて拡張することができていません。問題はAIそのものではなく、AIが適切なデータやシステムにアクセスできるかどうかです。
企業は、まるで自分たちの問題を解決してくれると信じるスーパースター社員を雇うかのようにAIツールを購入します。そして、その「社員」を重要なシステムすべてから締め出します。AIは、顧客データにアクセスできません(レガシーのCRMシステム内にあります)。財務記録には、触れられません(いろいろな部署に散らばっています)。契約書も確認できません(古いファイルサーバーに閉じ込められています)。
このような制約の下では、どんな人材も活躍できません。AIも同様です。しかし、多くの企業がこの問題を間違った方向で解決しようとします。彼らは最も高性能なAIツールから始め、最も複雑な業務ワークフローに注力し、そしてなぜ大規模に展開できないか疑問に思うのです。
AI導入の前にデータ基盤を構築する
ベンは、従来のアプローチを最初に試みたある金融会社の事例を紹介しました。この会社は、アドバイザーが顧客との面談に向けたの包括的な準備と提言の作成を支援するAIレポートを求めていました。しかし、プロジェクトは失敗に終わりました。その理由は次の通りです。
プロジェクト開始当初に、予期せぬ壁に突き当たりました。人間であれ。AIであれ、顧客の財務状況を迅速に把握する効率的な方法がそもそもありませんでした。顧客はあらゆるデータを提出していましたが、財務諸表や株式報告書、その他さまざまな種類のファイルが含まれてあり、書式も全く統一されていませんでした。「従業員でさえ、顧客の行動をすばやく把握することが全くできていませんでした」と、ベンは説明します。
![]()
複雑なAI実装にいきなり飛びつくよりも、基礎的な機能から小さくに始める方が、多くの場合、より大きな成功につながります。
同社は一歩引いて、AIレポート生成機能を構築する代わりに、はるかにシンプルなものから着手しました。それは、顧客のドキュメントからAIを活用してメタデータを抽出し、標準化されたフォーマットに構造化するというものでした。「実は、データの多様性を考えれば、顧客の状況を理解すること自体が困難だったことがわかりました」と、ベンは指摘しました。
同社の2度目の試み:
-
財務書類をセキュアでAIがアクセス可能なストレージに集約
-
基本的なメタデータ抽出から着手
-
解析機能を徐々に追加
-
最終的に、レポート生成全体を自動化
メタデータ抽出が出発点となり、同社の当初のAIビジョンを最終的に実現する基盤が築かれました。複雑なAI実装にいきなり飛びつくよりも、基礎的な機能から小さくに始める方が、多くの場合、より大きな成功につながります。
AIの本番展開に実際に効果のある5ステップフレームワーク
紹介した事例やそのほかの成功事例のパターンを分析した結果、成功しているAI導入企業が実践している正攻法がわかりました。
-
データを実態調査する: AIツールを導入する前に、自社のデータが実際にどこに保存されているかを調査しています。企業データの90%が非構造化データで、さまざまなシステムやフォルダに埋もれています。コンテンツがサイロ化されていると、ワークフロー自動化にAIを効果的かつセキュアに活用することは不可能です。
-
Single Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)を整備する: すべてのシステムを一気で置き換える必要はありませんが、AIツールが重要な情報にアクセスできるようにする必要があります。非構造化コンテンツに対してSingle Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)を整えることで、適切なガバナンスを確保し、情報漏洩を防ぐ権限体系を構築できます。「AIは秘密を守れません」。ガバナンスがなければ、AIはすべての情報をすべて人と共有してしまいます。「人間がアクセスできない情報にはAIもアクセスできないようにすることが、絶対に必要です」と、ベンは言います。
-
小さく(本当に小さく)始める: ベンは、ベンダーのドキュメント分析を自動化し、処理時間を10時間から20分に短縮した調達担当者の事例を挙げました。彼女は社内のAI推進者となり、このアプローチを全社に拡大しました。ボトルネックを1つ選び、 責任者を1名任命し、 明確な指標を設定しましょう。
-
チャットボットではなくAIエージェントを展開する: AIが質問に答えるのではなく、作業を完了し始めるときに魔法が起こります。 現在のAIエージェントは、業務ワークフローを非同期で処理し、複数のシステムにアクセスし、監視なしで動作します。AIは今や、機能全体を独立して構築できるようになりました。
-
実質価値を追跡する: 見栄だけの指標は捨て去りましょう。「10時間→20分」といった具体的な改善点を文書化しましょう。業務ワークフローごとのコスト削減額を計算しましょう。従業員満足度を測定しましょう。こうした戦術的な成功の積み重ねが、変革へとつながります。
日常型AIを活用した実業務への移行
AI実験者とAI運用者のギャップは日々広がっています。AIをビジネス変革ではなく技術プロジェクトとして扱う企業は、ますます後れを取ることになるでしょう。
「大きな野望を持ちつつ、まずは小さく始めることが肝要です。これは、プロジェクトで成功を収めている人たちがよく重視する点の1つです」と、ベンは繰り返し強調します。
AIの力は、アクセスできるデータの量に左右されます。方法論はあります。ツールもあります。しかしまずは、データ基盤を整備する必要があります。これを正しく行えば、既存の業務を自動化するだけではなく、 まったく新しい働き方が実現できるでしょう。
詳細は、Apple PodcastsまたはSpotifyをお聴きください。
※このブログは Box, Inc 公式ブログ(https://blog.box.com/)2026年2月4日付投稿の翻訳です。
原文リンク: https://blog.box.com/most-ai-pilots-never-scale-make-sure-yours-does
関連コンテンツ
- トピックス:
- Box製品情報
