BoxWorks Osaka 2026では、Enterprise Advancedプランをご採用いただいた株式会社ゼンリン様、東洋紡株式会社様、愛知製鋼株式会社様の3社をお招きし、Content + AI活用をどのような狙いで推進しているのか、またその実現に向けてどのような基盤整備を進めてきたのかを伺いました。
AI活用を見据えたときに、なぜコンテンツ基盤が重要なのか、なぜEnterprise Advancedプランを選択したのか、実際の取り組みを通じて見えてきた課題や気づき、費用対効果の考え方や社内での合意形成まで、実践的な視点で議論が展開されました。
実現したいこと × なぜEnterprise Advancedなのか?
膨大なデータ資産をAIで活かす ― ゼンリン様の挑戦
地図制作を手がける株式会社ゼンリン様(以下、ゼンリン様)では、ファイルサーバーの容量が5ペタバイト以上、格納ファイル数は数百億ファイルにのぼります。システム開発本部 情報システム開発部 部長の久保田耕平様は課題をこう語ります。
「たとえば、優秀な新しい営業マンやエンジニアが来ても、ファイルが多すぎて必要な情報がどこにあるのか分からず、探し出すのに苦労します。これでは即戦力としてベスト・パフォーマンスを発揮することができません」
株式会社ゼンリン システム開発本部 情報システム開発部 部長 久保田耕平様
そこで注目したのがBox AIです。「2020年に〇〇社に提案した資料がほしい」と問いかけるだけで、AIが候補を提示してくれます。従来のフォルダ巡回による検索が不要になるこの体験に、大きな可能性を感じたといいます。さらに、メタデータ管理機能によるExcel台帳の置き換えや、ワークフロー・電子承認による業務変革も視野に入れ、Enterprise Advancedプランを選定されました。
情報資産の活用と使いやすさの両立 ― 東洋紡様の選択
東洋紡株式会社(以下、東洋紡様)では、本支社・各工場のファイルサーバーを統合した約1ペタバイトのデータを保有。しかし、「検索しても全く出てこない」という状況が続いており、眠っている情報・ナレッジの活用が急務でした。
東洋紡株式会社 TX・業務革新総括部・共通システム部長 小川哲央様
TX・業務革新総括部・共通システム部長の小川哲央様は選定の理由をこう説明します。「メタデータを付けて情報を可視化しようとすると、Enterprise AdvancedプランのBox Appsのような機能がないと、利用者がついてきません。もう一歩踏み出して、情報活用と使いやすさを両立できるプランを選びました」
データ一元化からAI活用へ ― 愛知製鋼様の歩み
愛知製鋼株式会社様(以下、愛知製鋼様)では、約2年半前にBoxを導入し、昨年度末に全社のファイルサーバー・NASの完全移行を完了。データの一元化が実現したタイミングで、今年初めにEnterprise Advancedプランへの移行を決断しました。
愛知製鋼株式会社 執行職 モノづくり革新本部 大脇進様
執行職 モノづくり革新本部 大脇進様は語ります。「せっかく一つに集めたデータをいかにうまく使うか。SharePointをほとんど使っていなかったこともあり、Box内のデータをRAG的に活用することを考えると、カスタムエージェントが作れるBox AI StudioやBox Automateが必要でした」
Enterprise Advanced導入を実践して見えた課題・気づき
データガバナンスとAIリスクの両立 ― 愛知製鋼様
ファイルサーバー移行が完了した一方で、移行後に浮かび上がったのがデータガバナンスの課題です。大脇様は率直に語ります。
「全社公開のフォルダの中に、機密情報が含まれるファイルが残っていました。AIを使うと簡単に引っ張れてしまうので、今のうちに整理しなければなりませんでした」
また、全社規程をBox AIで活用するにあたり、Excelの方眼紙形式のファイルをAIに正しく学習させるため、カスタムエージェントを駆使して精度を高めた経験も共有。「データの品質をいかに上げ、更新されていく中でその品質を維持するかが、今後AIを使っていく上での最大のポイント」と強調しました。
AIの導入効果(KPI)という難題 ― ゼンリン様
久保田様が提起したのは、AI導入効果の測定という普遍的な課題です。「導入効果をどうKPIとして設定するか、答えがまだ得られていません」と語りつつ、こんな視点を示しました。
「この議論は約30年前、インターネットが企業に普及し始めた頃の議論に似ています。今やインターネットは、電気・ガス・水道と並ぶ社会インフラの一部です。では、電気・ガス・水道の導入効果は何でしょうか。議論はできますが、あまり建設的ではないように思います。AIも今や企業活動に必要不可欠なインフラになりつつあります。導入効果やKPIに固執しすぎて躊躇すると、チャンスを逃がしてしまう恐れさえあります。一方で、IT部門としては費用対効果を経営に説明する責任があります。このジレンマに悩まされているところです」
会場に問いかけると、半数以上の参加者がAIのKPI設定に難しさを感じていることが明らかになり、共感の声が広がりました。
本格活用に向けたメタデータ設計の難しさ ― 東洋紡様
小川様は、メタデータ活用の実態をこう語ります。「実験的に使う分にはいいのですが、本当に使いこなそうとすると、正しい答えが出るかどうか、ヒット率が本当に担保されるかどうかが問われます。そのためにはメタデータを丁寧に設計しなければなりません」
複数の情報資産に同名のメタデータが存在する場合の設計の複雑さや、古いデータ・ゴミデータが混在することによる精度低下も課題として挙げられました。また、新機能をエンドユーザーに公開する際の期待値管理の難しさも共有され、「変な形で機能を公開してBoxの評判が下がるのは避けたい」というジレンマも語られました。
費用対効果の説明・社内合意形成の道筋
汎用AIとの比較優位とナレッジ伝承の訴求 ― 東洋紡様
小川様は、社内合意形成の鍵をこう振り返ります。「弊社はもともと汎用AIをほとんど持っていませんでした。そのため、Enterprise AdvancedプランのAI機能は相対的にコストが低く見えました。追加コストは他社比で約20分の1でした」
さらに、製造部門・研究部門からの「技術伝承のためのナレッジを取り出せる手段になる」という現場の声が後押しとなり、人件費削減よりも知的生産性の向上という観点で経営層の納得を得ることができたといいます。
「AI社長」デモで経営層を動かす ― ゼンリン様
久保田様が実践したのは、PowerPointの資料説明ではなく、実物を触ってもらうデモンストレーションです。
「Box Hubsの機能を使い、過去に社長が発したメッセージやニュースリリースをソースとして『AI社長』を作りました。経営会議の場でデモを行い、経営層に実際に触ってもらうことで、RAGがこんなに簡単に作れるのかという驚きと納得感を得ることができました」
この体験型アプローチが、Enterprise Advancedプラン導入の承認につながりました。
設備保全部門での試算が意思決定を後押し ― 愛知製鋼様
大脇様は、熱心な現場部署との連携が突破口になったと語ります。設備保全部門では、ベテラン社員の技術・ノウハウが紙ベースのデータとして散在しており、「その人に聞かなければ分からない」という状況が課題でした。
カスタムエージェントを活用してこの課題に取り組んだ結果、「ベテランが抜けても補充不要、若手をより価値ある仕事に回せる」という試算が出ました。「その金額でプラス分は賄えるという見通しが立ったことで、社長の承認を得ることができました」と振り返ります。
これからEnterprise Advancedを検討する企業へのメッセージ
セッションの最後に、各社から検討企業へのメッセージが贈られました。
ゼンリン 久保田様: 「Enterprise Advancedプランはアイデア次第で色々なことができます。私たちが思う以上の可能性があります。ぜひ皆さんとアイデアを共有しながら、Boxを活用していきたいです」
東洋紡 小川様:「投資には目的があるはずです。いろんな機能に目移りしてしまうと、何がやりたかったのかが見えなくなります。目的を忘れないことが一番重要です」
愛知製鋼 大脇様:「Enterprise Advancedプランの機能をいかに使い尽くすか。営業・品質・バックオフィス系の業務自動化を進め、現場から『楽になった、ありがとう』と言われることを意識しながら進めていきたいです」

AI活用の前提としてコンテンツ基盤の整備が不可欠であること、Enterprise Advancedプランがその実装基盤として有効であること、そして導入を成功させるには目的の明確化・データ品質の向上・現場を巻き込んだ推進が重要であることが浮き彫りとなった、とても意義のあるセッションでした。
本セッションの全編は、BoxWorks Osaka 2026のサイトでアーカイブ視聴いただけます。(8月3日~8月31日)
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