藤沢市様は昨年、許認可業務における電子収受・決裁・施行・保管のデジタル化を実現しました。しかし、それはゴールではありません。今年はその基盤の上にAIエージェントを組み込み、さらなる業務変革に挑戦しています。
AIエージェントは実際に何ができるのか。何が難しいのか。自治体DXの「次の一歩」を模索する藤沢市様のリアルな挑戦をご紹介します。
藤沢市が直面する「2040年問題」と目指すDX
人口約44万人、職員約3,800人を擁する神奈川県藤沢市様。観光都市として知られる一方、全国的な課題である「2040年問題」と真正面から向き合っています。
デジタル戦略課 上級主査の大滝真也様は現状をこう語ります。「2040年にかけて、自治体の職員数が半分くらいになっていくかもしれないと言われています。今のサービスを、今の仕事のままのやり方で持続できるのかどうか、非常に危機感を持っています」
神奈川県藤沢市 デジタル戦略課 上級主査 大滝真也様
藤沢市様では、2022年にDX推進計画を策定。2025年にはデジタル推進室と情報システム課を統合したデジタル戦略課を設立し、組織横断的なデジタル化を推進しています。「職員数が半減しても、これまでどおり、むしろそれ以上の市民サービスを提供できる、持続可能な組織に変革していく」ことが藤沢市様が目指すDXです。
Boxによる許認可業務のデジタル化
藤沢市様の計画建築部では、建物の建築に際して必要な「審査報告書」の収受業務が長年アナログのまま運用されていました。郵送・FAXによる紙の収受、スキャンによる電子化、電話での指摘連絡、修正書類の再郵送、印鑑による決裁、紙文書としての保管。年間約16万枚の紙が行き交う、典型的なアナログ業務でした。
神奈川県藤沢市 住まい暮らし政策課 主査 吉野谷恵祐様
住まい暮らし政策課 主査の吉野谷恵祐様は当時の課題をこう振り返ります。「本当にこれは時間をかけてやらなくてはいけない仕事なのか?人がやらなければいけない仕事なのか?他にやるべきことがいくらでもあると思った時に、スキャンをしている作業をどうにかしたい、というところから始まりました」
2024年からBoxを導入した藤沢市様は、以下の機能を組み合わせてエンドツーエンドのワークフローを内製で構築しました。

- ファイルリクエスト: 郵送・FAXを廃止し、外部からの電子収受を実現
- Box Relay(現在のBox Automate): 収受データのリネームやフォルダ仕分けを自動化
- アノテーション(注釈): PDF上に直接指摘事項を書き込み、電話連絡を不要に
- 自動バージョン管理: 修正前後の書類比較を容易に
- 承認タスク: 電子決裁による迅速化(印鑑決裁の廃止)
- Box Governance: データの改変・削除を不可にし、公文書としての唯一性を確保
この取り組みにより、年間約16万枚の紙書類と約1〜2万枚のFAX収受が完全にデジタル化されました。
さらに特筆すべきは、文書管理のルール変更です。「文書管理システムもしくはその他業務システムでも公文書として決裁できるようにルールに変えた」(大滝様)ことで、Boxの中だけで業務がクローズできるようになり、データを移し替えるための余計な作業が一切不要になりました。
受け取って仕事はするが、内規を果たすためにデータを移し替えて文書管理システムに移すというデジタルのための作業をやらなくてはならない。これでは、エンドツーエンドではありません。ルールを変えて、Boxの中で承認を取るということで、Boxの中で完結させる。「エンドツーエンド」で人が余計な作業をしない環境を、ルールを変えながら実現したのも一つ大きな取り組みでした。
藤沢市様のBoxによる許認可業務のデジタル化の詳細は、「建築許認可業務をDX!Boxで構築した『許認可プラットフォーム」』で、法定書類の電子収受・決裁・施行・保管を実現」でご確認いただけます。
AI-Readyへの挑戦: 2つのAIエージェントの構築
電子収受によって豊富なデータが蓄積されたことで、藤沢市様はいよいよAI活用の次のフェーズへ進みます。
吉野谷様は「電子で受け取ったデータは、そのままAIで利用できるようになります。AIを使っていくためには、こういった電子的にデータを扱うという土壌が必要です。土壌がないと、AIで資料を作るとか、何かアイデアを出してもらうとか、クリエイティブな作業にばかり使われてしまいます」と語ります。
審査補助AIエージェント
1つ目は、電子収受した書類の「審査補助AIエージェント」です。長期優良住宅の認定申請など、従来は職員がチェックシートを用いて目視で行っていた審査業務を対象としています。AIは申請書・図面間の数値の不整合確認、基準への適合判定を表形式で返し、さらに判定の根拠(どこから読み込んだか、どう計算したか)も提示します。

「AIはハルシネーションを起こす可能性があるので、結果をどのように計算したのか、どこから読み込んだのかを表示させて、最終的にもう一度大丈夫なのかチェックするシステムを組んでいます」(吉野谷様)
昨年1年間の審査データを使ってAIの精度を検証できる環境も整えており、信頼性の担保にも取り組んでいます。
業務補助AIエージェント(Box Hubsの活用)
2つ目は、「業務補助AIエージェント」です。人事異動による知見の喪失や業務記録の散在という課題に対応するため、建築基準法の条文・過去の審査記録・取り扱いファイルをBox Hubsにまとめ、AIが参照できるナレッジ基盤を構築しました。

「新人が先輩に聞いたり、資料を確認したりして、回答までに1週間くらいかかる質問に、AIはものの数秒で答えを出してくれます」(吉野谷様)
さらに、回答の引用元が自動的に紐づくため、なぜその答えが導き出されたかを職員にフィードバックすることも可能です。
DX効果の最大化: 広域連携と利用者との協議
藤沢市様の取り組みが特に際立つのは、自市だけで完結させない姿勢です。審査報告書の提出者である指定確認検査機関は複数の自治体に書類を提出するため、藤沢市だけがデジタル化されても利便性は上がりません。
そこで吉野谷様は、隣接する茅ヶ崎市・鎌倉市にも働きかけ、3市合同での実証実験を開始。さらに神奈川県内・県外の多くの自治体にも取り組みを広げ、現在は3市合計で年間約4,627件の新築物件に係る審査報告書等の電子運用ルールを構築するまでに至っています。
指定検査機関にもしっかりとしたメリットがあります。自分たちも、それに関わる人たちの業務も楽になります。審査が早くなるので、建築に関わる仕事がスムーズに進んでいきます。
今後の展望: 業務の再設計とAIとの共存
大滝様は今後の方向性をこう語ります。「これからは、少ない担い手でも回せる自治体を作っていかなくてはなりません。そのための強い武器の一つがAIです」
吉野谷様も「AIは強いツールであり、ある種の仲間になってくるのではないかなと思っています。これから人が減っていく中で、人がやるべきことに注力していくためには、事務を支えてくれる存在が必要になってきます」と述べ、AIを「心強い仲間」と表現しました。

藤沢市様が目指すのは、職員をAIに置き換えるのではなく、「職員の仕事の高度化」。個別最適化ではなく横断的最適化を行うことで、業務のデジタル化だけでなく、業務そのものを再設計(BPR)し、人とAIが自然に共存する組織への変革です。
藤沢市様の取り組みは、「ツールの導入」ではなく「業務のあり方の変革」を起点としています。2040年問題という避けられない未来に向けて、今まさに業務を見直す「最後の機会」に挑む藤沢市様の姿は、全国の自治体・企業にとって力強いロールモデルとなるでしょう。
本セッションの全編は、BoxWorks Osaka 2026のサイトでアーカイブ視聴いただけます。(8月3日~8月31日)
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