今年で3回目を迎えた「BoxWorks Osaka」を2026年7月16日に開催いたしました。
BoxWorks Osaka 2026のオープニングキーノートでは、「Content + AIが変える経営と組織の未来」をテーマに、西日本旅客鉄道株式会社様(以下、JR西日本様)、東洋紡株式会社(以下、東洋紡様)にご登壇いただき、AIとコンテンツ管理の融合が企業経営・組織変革にもたらすインパクトについて、最前線の取り組みと知見を共有いただきました。(BoxWorks Tokyo 2026のキーノートは、こちら)

JR西日本様: 全社DXを支えるBoxの活用と今後の展望
JR西日本で技術理事 共創ソリューション本部 システムマネジメント部長を務める甲斐康弘様はまず、JR西日本様がデジタル変革に本腰を入れるきっかけとなった背景を語りました。
西日本旅客鉄道株式会社 技術理事 共創ソリューション本部 システムマネジメント部長 甲斐康弘様
「2020年、2021年の2年間で1兆円以上の売上が消失し、最終損益が3,500億円の赤字となった」というコロナ禍の深刻な打撃を受け、JR西日本様はグループとしてのデジタル戦略を抜本的に見直しました。社長をトップとするデジタルソリューション本部を発足させ、「顧客体験」「鉄道システム」「従業員体験の再構築」という3つの柱を掲げてDXを加速。甲斐様が担当するBox全社導入は、この「従業員体験の再構築」の中核を担う取り組みとして位置づけられています。
Box全社導入の現状と規模
現在、JR西日本様ではユーザー数27,536人、データ容量376TBという大規模なBox運用を実現しています。導入の主目的は「コンテンツセキュリティの強化」。Box導入を次の3段階で推進してきました。
- 容量無制限のBoxを現場に展開して、ファイルサーバー・NAS・USBを廃止
- 個人フォルダを全社員に開放して、ローカルPC保管からクラウド保管へ移行
- Box Shieldによる機微情報管理を全社展開
本社・支社のファイルサーバーはすでに全廃済みで、ファイルサーバーからの移行データだけで130TBに上ります。「容量無制限で現場を含めて全社員に展開することで、ファイルサーバーやNAS、USBの廃止をどんどん進めました」と、甲斐様は語りました。
Box Shieldによる秘密情報管理
セキュリティ面では、Box Shieldを「分類ラベル × アクセスポリシー × 脅威検出」の三位一体で運用し、操作ミスや悪意ある操作を抑制するガードレールとして機能させています。秘密情報フォルダの作成時や関係者の招待・更新・削除時に申請が必要な仕組みを整備して、約8ヶ月間で1,365件の申請を処理しました。
「Box Shieldは素晴らしいです。脅威を検出した際に、少し異常な取り扱いについてちゃんと警告を出してくれます」と、甲斐様は実感を込めて語りました。また、クラウド導入に慎重な部署に対しては「IT部門が、自分たちとしてやりたい、やりましょうよという一人称で投げかけるのが大事」と、推進側の姿勢の重要性も強調しました。
中期経営計画2030とBoxの役割
今後の展望として、甲斐様はJR西日本グループ中期経営計画2030を紹介しました。
10年後に営業利益を約15倍・1,000億円増やすという目標のもと、次の5年間で1兆円の投資増・成長投資5,200億円増を掲げ、一人当たりの人的投資付加価値プラス15%以上を人材戦略の目標として設定。「その営みの中核にあるのがBox」と明言し、蓄積したコンテンツとAIを組み合わせた3つの重点施策を示しました。
- 社内RAGチャットとの連携: 全社規程・マニュアルをBoxに集約し、社内汎用チャットボットのRAGデータソースとして活用。ベテラン社員の暗黙知を継承し、「属人への依存から知識の共有・活用へ」の転換を目指す
- Box AIの利活用: Box上のファイルに対する要約・翻訳・ドラフト作成をAIが支援し、「業務支援AIから意思決定支援AIへ」進化させることで、全社員がAIを活用するデジタルワーカーへの変革を図る
- Box Automateによる自動化: 工事の竣工確認や乗車券類の審査業務など一部ではすでに活用が始まっており、今後はAIエージェントが情報収集・報告作成まで自律的に実行することで、「人的リソースを定例業務から解放して、価値創造業務へシフト」することを目指す
最終的なビジョンとして甲斐様は「すべてのコンテンツをAIにつなぎ、JR西日本グループの変革エンジンへ」という言葉を掲げ、Boxを全社ストレージからグループのAIデータ基盤へと進化させ、AX(AIトランスフォーメーション)を通じてCX(企業変革)に挑戦していくと力強く宣言しました。
東洋紡様: TX活動によるBox活用成熟度の向上と第2期への挑戦
東洋紡で執行役員 CDO、CISO TX・業務革新総括部 統括を務める矢吹哲朗様には「AIレディなデータ基盤とは何か」というテーマで、東洋紡様における4年間の実践をご紹介いただきました。
東洋紡株式会社 執行役員 CDO、CISO TX・業務革新総括部 統括 矢吹哲朗様
1882年創立、連結売上高4,216億円(2026年3月期)・連結従業員9,398名を擁する東洋紡様は、渋沢栄一を創立者に持つ144年の歴史ある企業です。「144年という歴史を背負いながら、やりやすいことよりやりづらいことの多い状態の中でTXを推し進めています」と矢吹様は率直に語り、伝統的な大企業でのDX推進の難しさを示しました。
TX活動の立ち上げと基本方針
矢吹様が2022年に東洋紡に入社した当時、東洋紡様では情報子会社が30年間独立して運営されており、事業部門とシステム部門の壁、人材不足、システムのレガシー化という課題を抱えていました。2022年6月に2030年の目指す姿「Business Innovationを加速・推進するIT環境の実現」を策定し、情報子会社の統合・再編を断行。組織名も「デジタル戦略」から「TX(Toyobo-Transformation)」に改め、単なるデジタル化ではなく「会社変革、なんなら文化も変えてしまいたい」という強い意志のもと、TX活動を推進しています。
TX活動の基本方針は「不要な業務はヤメル」「同目的のものはまとめる」「デジタル活用でつなぐ」の3つ。2024年度にはIT賞を受賞するなど、外部からも評価される取り組みへと発展しています。
BoxをAIレディなデータ基盤として選択した理由
Boxの導入は、全社ファイルサーバーの更新という課題がきっかけでした。
「今更ながらファイルサーバーを更新するという話になって」と矢吹様は振り返り、セキュリティ強化を主目的にBoxを採用。前職でもBox導入に携わった経験を持つ矢吹様は、MicrosoftアーキテクチャだけでなくBoxをストレージに採用することで、認証認可・ストレージを異なるベンダーで構成するセキュリティアーキテクチャを実現。
「やるなら一回でやる。本格的にやるために特別な業務アプリ以外のファイルサーバーを全部廃止させて全部寄せるのを1年半ぐらいでやりました。弊社の中のコンテンツはほぼほぼ全部Boxにいるという状態を今作っています」と語り、徹底したコンテンツ集約の姿勢を示しました。
また、Box社のロードマップを2年前から把握し、Box AIの将来性を見越して「AzureやMicrosoftの中で何かやるのではなく、弊社はデータにこだわって、Boxの中のデータを整備して、来たるべき時代を迎えましょう」という戦略的判断のもとで基盤整備を進めてきたことも明かしました。
Box活用成熟度モデル(1.0〜5.0)
東洋紡様が定義した「Box活用成熟度モデル」は、組織全体のデジタル活用レベルを可視化するフレームワークです。

1.0「置く」(ファイルサーバー代替)→ 2.0「守る」(セキュリティ・統制)→ 3.0「見つける・繋ぐ」(ナレッジ基盤)→ 4.0「回す・作る」(プロセス自動化)→ 5.0「任せる」(AIエージェント協働)という5段階で構成されており、「誰でも・いつでも・どこでも安全に仕事ができる土台」を目指す指針となっています。
第1期の成果と第2期への課題
Box活用のロードマップは、「Enterprise Plus(2022〜2025年)による情報資産蓄積フェーズ(第1期)」から、「Enterprise Advanced(2026年〜)による情報資産活用フェーズ(第2期)」へと移行しています。

第1期では研究開発部門の研究レポートをBoxで社内公開し、「今まで金庫の中に入れて守るだけだったデータを、使えるデータに変える」取り組みを推進。製造現場のオペレーターが日々出す日報・週報をRAG化し、暗黙知の活用にも着手しました。
一方で、第2期に向けた課題もありました。「PoC案件中心にとどまり、なかなか基盤整備レベルから上がっていかない」のが現実で、「結局、私たち自身がちゃんとシナリオを作り、それに合ったテーマを抽出し、型を作っていなかったから回っていない」と自己分析。第2期の課題解決方針として2軸を設定しました。
- 案件選別軸: 成果の時期と推定効果が見える案件を優先
- 機能適用軸: 現場の活用価値が高い機能を優先
そして、Box Automate、Box AI Studio、MCP/AIエージェント連携などEnterprise Advancedの高度な機能群を現場業務へ適用し、業務効率化・生産性向上の効果を着実に生み出していくことを目指しています。
矢吹様は最後に、「単に道具を入れるということから、一人一人が考えて行動する。それはイコール、日々のデータをどう作るかということをちゃんと実践できれば、会社は変わっていく」と語り、テクノロジー導入にとどまらない組織文化の変革こそがTXの本質であることを力強く訴えました。
「Content to Context」が拓く経営の未来
JR西日本様、東洋紡様の登壇を通じて浮かび上がったのは、コンテンツをただ管理するだけでなく、AIが活用できる「コンテキスト」として整備することが、これからの経営競争力の源泉になるということです。JR西日本様が描くAXからCXへの変革、東洋紡様が実践する成熟度モデルによる段階的な進化。それぞれのアプローチは異なりながらも、「人とAIが協働する組織づくり」という共通のビジョンに向かっていました。
BoxWorks Osaka 2026のオープニングキーノートは、AIとコンテンツ管理の融合が単なるIT投資を超え、経営戦略そのものであることを力強く示すセッションとなりました。
BoxWorks Osaka 2026のキーノートの全編は、BoxWorks Osaka 2026のサイトでアーカイブ視聴いただけます。(8月3日~8月31日)
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