AIアプリケーションは、顧客にリスクがあることを教えてくれます。より難しいのは、なぜそうなのか、その結論を裏付ける証拠は何か、そして次に何をすべきかという問いです。その答えは、データウェアハウス、最新の契約書、アカウントプラン、最近のサポート履歴などに分散していることがよくあります。
データウェアハウスでは、構造化されたシグナルを集約して分析できます。レイクハウスでは、より広範なデータセットを統合でき、ベクトルインデックスを使えば、選択したコンテンツをより簡単に検索できるようになります。
これらのシステムのいずれも、ガバナンスが適用されたコンテンツレイヤの必要性をなくすものではありません。分析用のコピーや検索インデックスは、アプリケーションがコンテンツを見つけるのに役立ちます。しかし、利用時点における最新のソース、ユーザーのアクセス権、その時点で適用されるポリシーを確認するために、コンテンツシステムとの接続を維持する必要があります。
この接続によって、AIアプリケーションは、根拠があり監査可能な回答や、権限に基づくアクションを実現するために必要な、最新かつ権限を考慮したビジネスコンテキストを得られます。これによりデータアーキテクトは、管理されていないコピーを作成したり、下流の各システムでガバナンスを再構築したりすることなく、構造化されたシグナルと企業コンテンツを組み合わせることができます。
Boxの「企業におけるAI利用の現状」調査では、IT意思決定者の96%が、AIエージェントにとって企業固有のコンテンツやナレッジへのアクセスが重要だと回答しています。一方、多くのユースケースでAIエージェントを信頼できる社内コンテンツに接続している企業は、わずか36%でした。
アーキテクチャ上の課題は、新たなコピーやガバナンスの問題を生じさせることなく、そのコンテンツをデータおよびAIスタックにどう接続するかということです。

企業コンテンツをデータアーキテクチャに接続する
企業コンテンツは、正式なデータ基盤のアーキテクチャ内ではなく、その横に存在していることがよくあります。
CRMのレコードでは、顧客にリスクがあることが示されているかもしれません。製品テレメトリでは、利用量の減少が示されているかもしれません。その理由は、Boxに保存された契約書、サポートサマリー、調査資料、アカウントプランに記載されている可能性があります。
同じパターンは、ビジネス全体で見られます。サプライヤーレコードには更新日があり、契約書には義務が定められています。プロジェクトデータベースにはマイルストーンの遅延が記録され、ローンチプランにはその阻害要因が示されています。取引テーブルには支払いが記録され、請求書には何を購入したかが記載されています。
メタデータを使ってコンテンツとデータをつなぐ
ファイルに一貫したビジネスメタデータを付与すると、データスタック全体でファイルをより有効に活用できます。
Boxのメタデータテンプレートでは、ファイルやフォルダに適用できる再利用可能なスキーマを提供します。たとえば、契約書テンプレートには、顧客ID、契約種別、発効日、更新日、地域、ステータスなどを含めることができます。請求書テンプレートには、サプライヤーID、請求書番号、金額、発注書、支払日などを含めることができます。
これらのテンプレートのフィールドにより、データチームはBox内のコンテンツと、データウェアハウス、レイクハウス、ERP、CRM内のレコードを確実に関連付けることができます。また、アプリケーションがセマンティックな類似性に頼る前に、検索対象を絞り込むのにも役立ちます。
たとえば、次のようなリクエストを考えてみましょう。
顧客1048について、今後90日以内に更新される最新の締結済み契約書を検索する。
このリクエストから生成されるメタデータにより、顧客、ドキュメントの種類、ステータス、更新期間を特定できます。LLMがそれを取得する際には、タスクに関連する条項やドキュメントに対象を絞ることができます。
メタデータ抽出を大規模に自動化する
大規模なコンテンツ環境全体で、すべてのファイルに手作業でタグ付けする方法には拡張性がありません。メタデータ抽出では、ドキュメント内の情報を特定し、元のファイルに紐づくメタデータとして付与します。
契約書であれば、当事者、日付、義務、準拠法、更新条件などが該当します。請求書であれば、サプライヤ、請求書番号、金額、支払期日などが該当します。
Boxでは、Box Extractがこれらのフィールドを抽出し、元ファイルとの接続を維持したままメタデータとして保存します。従業員はこれらを活用して、検索の改善、ワークフローのトリガー、アプリケーションロジックのサポート、選択した値のデータプラットフォームへの送信や分析を行うことができます。
これにより、企業コンテンツと構造化データの間に実用的な橋渡しが生まれます。下流のテーブルには契約日や顧客IDを格納しながら、契約書へのリンクとしてBoxのファイルIDを保持できます。
各システムの役割を明確にする
AIアプリケーションには、関連コンテンツを特定し、最新のソースとユーザーのアクセス権を確認し、利用可能な結果を返せるアーキテクチャが必要です。Boxを使ったアーキテクチャでは、これは次の4つの要素で構成されます。
- Boxは、ソースコンテンツとそのメタデータ、権限、バージョン、データ分類、ライフサイクル管理を維持します。
- 検索インデックスは、検索可能な表現形式を作成し、候補となるソースを特定します。
- コンテキストサービスは、ソースを確認し、関連資料をまとめ、引用情報を返します。
- AIアプリケーションまたはAIエージェントは、タスクロジックを適用し、コンテキストに基づいて推論し、回答を提示するか、権限に基づくアクションを実行します。
こうした境界が重要なのは、インデックスがファイルを処理した時点の状態を表すものだからです。その後、ユーザーのアクセス権が失われたり、新しいバージョンが承認されたり、ファイルの分類が変更されたり、削除されたりする可能性があります。
リクエスト時点で、コンテキストサービスはユーザーのIDと実行されるタスクを把握しています。インデックスを使用して候補となるBoxのファイルIDを見つけたうえで、Boxに戻り、現在のアクセス権、バージョン、ポリシー、利用可否を確認できます。
これはゼロトラストモデルに沿ったものです。AIエージェントをBoxに接続しても、企業コンテンツへのアクセス権が広がるわけではありません。Boxは各リクエストをユーザーの既存権限に照らして評価するため、AIエージェントが検索、取得、操作できるのは、そのユーザーがすでに利用を許可されているコンテンツだけです。
インデックスによって検索は高速になります。Boxは引き続き、最新のソースであり、アクセスとポリシーを適用するポイントとして機能します。
下流システムとの整合性を維持する
外部のインデックスや分析用データセットは、コンテンツが変化するにつれて必ず差異が生じます。
BoxのイベントやWebhookを使えば、ファイルがアップロード、更新、移動、削除されたときに下流サービスへ通知できます。インデックスサービスはリポジトリ全体をクロールする代わりに、影響を受けたファイルだけを再処理できます。分析パイプラインでは、対応する抽出フィールドを更新できます。ファイルの削除をきっかけに、下流にある表現データを削除することもできます。
各チャンク、埋め込み、メタデータレコード、サマリーには、Boxまで遡れる十分な情報を保持する必要があります。これには、次の項目が含まれます:
- BoxファイルID
- ソースのバージョン
- ファイル内の位置
- 実行した変換
- 処理時刻
この紐付けにより引用が可能になり、プラットフォームチームは更新、削除、データリネージを実務的に扱えるようになります。
ワークロードに適したインターフェースを選ぶ
Boxでは、複数のインターフェースを通じてコンテンツ機能を公開できます。
APIやSDKは、操作が明確な場合に適しています。たとえば、特定のファイルを取得する、メタデータフィールドを読み取る、イベントをサブスクライブする、アウトプットを特定のフォルダにアップロードするといった操作です。
Box MCPサーバーは、AIエージェントがタスクの実行中に、権限が付与された複数の機能から適切なものを選択する必要がある場合に有効です。AIエージェントは、コンテンツの検索、ファイルの取得、ドキュメントの分析、メタデータの操作、承認済みのコンテンツアクションの実行などを行えます。
本番環境のアーキテクチャでは、両方を利用できます。SDKはインデックス作成やイベント処理を支え、MCPは外部のAIエージェントに対して、Boxのコンテンツやツールへガバナンスの効いた経路を提供できます。
何を移動するかを慎重に判断する
すべてのワークロードで、ソースコンテンツのコピーが必要なわけではありません。多くのケースは、次の3つのパターンでカバーできます。
リクエスト時のアクセス
アプリケーションは、必要になった時点でBoxからコンテンツを取得します。最新の権限、バージョン、ポリシーがタスクの中心となる場合に適しています。
インデックスを使った検索
選択したBoxコンテンツを、外部のベクトルインデックスまたはハイブリッドインデックスに表現します。BoxのファイルIDを保持し、コンテンツを返す前にソースを再確認します。
分析用レプリケーション
Box Extractで生成されたメタデータや、選択したその他のコンテンツ属性を、レポート、AIモデルの構築、分析のためにデータプラットフォームへ書き込みます。
3つすべてを利用する場合もあります。重要なのは、何をコピーするのか、なぜ必要なのか、どう最新の状態を維持するのか、そしてどのシステムが信頼できる値を保持するのかを明確にすることです。
構造化データとコンテンツを組み合わせる1つのユースケースから始める
最初からコンテンツ環境全体をインデックス化する必要はありません。
構造化データと企業コンテンツの両方を必要とするワークフローを1つ選びます。顧客の更新リスクは、分かりやすい例です。
- データウェアハウスには、アカウント、製品利用状況、更新に関するデータがあります。
- Boxには、契約書、サポートサマリー、アカウントプラン、顧客調査があります。
- Box Extractは、更新条件や義務をメタデータとして抽出します。
- 顧客IDによって、Boxのファイルとデータウェアハウスのレコードを関連付けます。
- コンテキストサービスは、構造化されたシグナルと権限に応じたBoxコンテンツを組み合わせます。
- アプリケーションは、引用情報を含む更新に関する概要を作成します。
この最初の実装により、安定した識別子、メタデータスキーマ、イベント形式、ID情報の伝播、認可チェック、引用といった、他の部署でも再利用できるパターンを確立できます。
データとAIスタックにおけるBoxの役割
Boxは、データウェアハウス、レイクハウス、検索インデックス、オーケストレーションフレームワーク、AIモデルに取って代わるものではありません。これらのシステムが企業コンテンツを扱うための、ガバナンスの効いた方法を提供します。
この役割分担により、データアーキテクトは、正規のコンテンツを移動したり、そのたびに管理機能を再構築したりすることなく、AIモデル、インデックス、分析システムを追加できます。
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このブログは Box, Inc 公式ブログ(https://blog.box.com/)2025年9月9日付投稿の翻訳です。
著者: Rutuja Rajwade, Senior Product Marketing Manager, Platform & AI at Box
原文リンク: https://blog.box.com/how-data-architects-can-give-ai-current-authorized-context
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