AIの進化で働き方が変わる中、多様な人材が活躍できる環境づくりは企業の重要な課題となっています。
年次フラッグシップイベント「BoxWorks Tokyo 2026」では、「AIで拓く、女性キャリアの未来 誰もが活躍できる新時代へ」と題したトークセッションを開催。AI分野の第一線で活躍するゲストスピーカーを迎え、AIがもたらす働き方の変化やキャリア形成への影響、そして誰もが自分らしく力を発揮できる組織づくりについてお話しいただきました。
左から、ノンフィクションライター 酒井 真弓氏
シンシアリー株式会社 代表取締役CEO 一般社団法人Women AI Initiative Japan 代表理事 國本 知里氏
LINEヤフー株式会社 AI CBU AI Strategy & Enablement Unit AI推進Division 越川 滋代氏
Box Japan 執行役員 セキュリティ&コンプライアンスGTM部長 野間 文子
各社におけるAI活用の取り組み
今回のセッションは、ノンフィクションライターの酒井 真弓氏をモデレーターに迎え、シンシアリー株式会社 代表取締役CEO・一般社団法人Women AI Initiative Japan代表理事を務める國本 知里氏、LINEヤフー株式会社 AI CBU AI Strategy & Enablement Unit AI 推進Divisionの越川 滋代氏、そしてBox Japan 執行役員 セキュリティ&コンプライアンスGTM部長の野間 文子が登壇しました。
ノンフィクションライター 酒井 真弓氏
セッションの冒頭、國本氏が一般社団法人Women in AI Initiative Japanの取り組みについて紹介しました。
「AIによって働き方が大きく変わる中で、AIを学び、これからのキャリアについて相談できる場はまだ多くありません。そうした状況を踏まえ、さまざまな人がAI時代の働き方について学び、新たな価値観を共有・アップデートしていく活動を進めています」
続いて酒井氏は、各社のAI活用状況について問いかけました。
越川氏は、LINEヤフーでは2023年にOpenAI社との利用契約締結を経て、約1万人の全社員が安全に生成AIを活用できる環境を整備したと説明。そのうえで、単なるツールの導入にとどまらず、業務での活用定着を目的に、教育コンテンツの整備や利用促進に取り組んできたと語りました。
「議事録作成や資料作成など一部の業務では、生成AI活用を義務化しました。その結果、どこで使えばよいのかわからないという不安が解消され、社員が自発的に活用領域を広げる好循環が生まれています」
次に國本氏は、CMOやCFOをAIが担う自社の事例について触れ、こうした実践で得た知見を生かして顧客企業のAI活用による業務変革支援に取り組んでいることを説明。しかし「女性に関しては、まだAI自体が怖い、どう使ったらいいかわからないという人も多い」と述べ、AI活用のレベル感には大きな差がある現状を指摘しました。
一方、野間は、Box Japanでは社員全員がBox AIを活用しながら業務効率化を進めていることを紹介。自身も新たな法令やセキュリティガイドライン公開時に、その内容をAIに読み込ませ、必要な対応事項の要約や資料ドラフトの作成に活用していると言います。
「Box AIはBox内のコンテンツに付与されているアクセス権限を保ったまま活用できるため、情報漏えいのリスクを心配せずに使えるのがメリットです」
シンシアリー株式会社 代表取締役CEO 一般社団法人Women AI Initiative Japan 代表理事 國本 知里氏
AI活用を組織に定着させるには
「AI活用を組織に定着させるためのポイント」というテーマでは、最初に越川氏がLINEヤフーの事例を紹介しました。AI活用に積極的な社員を起点にユースケースを横展開し、教育コンテンツの整備や各組織での活用検討を進めながら、トップダウンとボトムアップの両面から社内浸透を図ってきたと言います。
「使わない人をどう巻き込むかが最も難しいです。そのためにはトップダウンの力も借りながら、社員一人一人に『自分事化』させるため、生成AI活用を義務化なども含め、試行錯誤を続けています」
それを受けて、酒井氏は「AI活用を社内に定着させるうえでは、従業員が安心して使えるための環境整備も重要では?」と問いかけ、Box Japanでの取り組みについて野間に尋ねました。
野間は、AI活用を進めるうえでは、情報漏えいやハルシネーションのリスクに加え、AIそして利用者がどの情報にアクセスできるのかといった権限管理や倫理的な課題があるため、それらを踏まえた組織としての指針が重要になると説明しました。
「Boxでは、米国国立標準技術研究所(NIST)のAIリスクマネジメントフレームワークをもとにAIガバナンスを構築し、ユースケースごとのリスクを評価しながら活用を推進しています。1つのチームや部門だけで決めるのではなく、さまざまな部門が連携しながらルールを整備することが、社員が安心してAIを活用するためには重要です」
LINEヤフー株式会社 AI CBU AI Strategy & Enablement Unit AI推進Division 越川 滋代氏
完璧を目指さず、まず使ってみる
組織的な取り組みに加えて、AI活用には利用者自身のマインドセットも重要です。國本氏は、AI活用では完璧を目指さないことが大切であり、まずはAIに聞いてみて、実際に使いながら慣れていくことが、活用の広がりにつながると説明しました。
この発言を受けて酒井氏は、自身も取材活動でAIに助けられる場面が増えているとし、登壇者に日常的な活用について質問しました。越川氏も「今はとにかく何でもAIに聞いている」と語り、実際に海外で携帯電話を紛失した際に、まずAIに相談したというエピソードを紹介。野間も、引っ越し先の比較検討や旅行プランの作成など、仕事以外の場面でもAIを活用し、「時短」につなげていると語りました。
AIエージェント時代に求められる人の役割
セッション後半では、AIエージェントについても議論が交わされました。
越川氏は、AIエージェントの普及によって人間とAIの役割分担はさらに進んでいくことを、自社の活用を通じて実感していると言います。
「AIエージェントのアウトプットに対して判断したり優先順位をつけたり、問いの質を考えたりする力がこれから人間にとって重要になると思います。仕事が奪われるというより、人間が磨くべきスキルがあり、良い問いを起点にAIエージェントがパートナーになる循環が生まれていくと感じています」
國本氏は、メール作成や顧客リサーチなどすでにAIエージェントを日常業務に活用しており、これまで時間を要していた作業が「体感として10分の1程度」に短縮されたと語りました。一方、野間は、AIエージェントで生まれた時間の使い方が重要だと指摘しました。
「AIはゼロから何かを生み出しているわけではありません。定型的な作業はAIに任せ、人間は新しいことをゼロから考えるといったクリエイティブな領域にフォーカスしていくことが重要になると考えています」
Box Japan 執行役員 セキュリティ&コンプライアンスGTM部長 野間 文子
AIが広げるキャリアと働き方の可能性
最後に、AIを活用した仕事と生活の両立について意見が交わされました。
越川氏は、そのためにはAIにできるかどうかを先入観で判断するのではなく、まずは試してみることが重要だと指摘。「AIに聞いてみる」というサイクルを回すことで新たな発想が生まれ、人間とAIが相互に補完しながら進化していくことが大切だと語りました。
國本氏は、自社では半数以上が女性社員であり、多くが週5日のフルタイム勤務ではないものの、AIを活用することで高い生産性を維持しながら、多くの社員が育児や家事、介護との両立を実現していることを強調。
「AIに業務の一部を任せ、その間に別の仕事や家庭の用事を進めるなど、AI時代ならではの柔軟な働き方が実現できることがわかったので、それをどんどん広めていきたいです」
一方、野間は、AIを使って自身のレジュメをブラッシュアップしていると紹介。女性は自己評価が低くなりやすい傾向があるという調査にも触れ、AIは強みや成果を客観的に整理するパートナーにもなり得ると語りました。
本セッションでは、AIによる生産性向上を軸に、働き方や組織のあり方について多角的に議論が行われました。本セッションの全編は、BoxWorks Tokyo 2026のサイトでアーカイブ視聴いただけます。(6月24日~7月31日)
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