BoxWorks Tokyo 2026では公共機関のお客様を対象とした公共トラックを開催し、小規模自治体から大規模自治体、海外までBoxの活用事例をご紹介する7つの多彩なセッションを実施しました。
その中から、「大阪市に学ぶ、行政DXは組織横断から動き出す ―人とAIにやさしい情報管理基盤への挑戦―」と題したセッションで語られた、大阪市におけるServiceNowとBoxによる文書管理の取り組みをご紹介いたします。
バックオフィスDXが目指す全体最適化
大阪市では、2026年3月に改定された「大阪市DX戦略アクションプラン」に基づき、「サービスDX」「都市・まちDX」「行政DX」の3つの視点(VISION)でDXを推進しています。セッションの冒頭では「行政DX」の中核的な取り組みである「バックオフィスDXグランドデザイン」(以下、バックオフィスDX)について、大阪市 デジタル統括室 DX推進担当 DX推進グループ 担当係長 有本 大様が説明しました。
大阪市 デジタル統括室 DX推進担当 DX推進グループ 担当係長 有本 大様
「バックオフィスDXの取り組みは、予算編成、調達・契約、支払いの一連の事務、文書事務や人事給与関連事務といった、いわゆるバックオフィス業務(内部管理業務)の全体最適化により、市役所組織全体のパフォーマンスの向上の実現を目指したものです」
大阪市では従来のバックオフィス業務において、紙やメール、Excel等の利用を前提としたアナログ業務の残存や、システム間のデータ連携ができないことによる多重入力等の課題を抱えていました。そこで、それらを解消する新たな基盤として「統合プラットフォーム」と「汎用オンラインストレージ」を導入。業務の流れ(案件・タスク)を管理する「統合プラットフォーム」としてServiceNow、公文書ファイルを一元管理する「汎用オンラインストレージ」としてBoxを活用し、アナログ業務のシステム化や多重入力の解消、より適切な公文書管理等の実現を目指しています。
「KPIとしては2030年までに2023年比で、多重入力箇所0箇所、作業削減時間110万時間、事業者負担軽減時間12万時間、生産性向上10.3%アップ、職員のやりがい向上80.0%を掲げています」
令和5年度のプロジェクトチーム発足後、令和6年度に統合プラットフォームを調達。令和7年度には統合プラットフォームの開発ならびに「共通公文書管理サービス」の開発を進めました。そして4年目にあたる現在(令和8年度)は案件管理・連携サービスやアジャイル開発に着手しており、令和9年度(令和10年1月)からの本格運用開始を予定しています。
案件IDとメタデータで実現する新たな公文書管理
続いて、大阪市 総務局 行政部 行政課 担当係長 兼 デジタル統括室 担当係長 坂部 智洸様が、バックオフィスDXの取り組みの中で進める「共通公文書管理サービス」の詳細を説明しました。
大阪市 総務局 行政部 行政課 担当係長 兼 デジタル統括室 担当係長 坂部 智洸様
大阪市では従来、公文書管理において次のような課題を抱えていたと言います。
- 公文書の保管場所が分散しており、原本または正本の検索に手間がかかる
- 共有ファイルサーバー上に保存された文書は更新・移動が容易であり、滅失のリスクが高い
- 類似ファイルをさまざまな場所で保管していることによってストレージを圧迫している
- 起案・決裁・保管できるシステムが複数あり、機能が重複している

「従来のファイルサーバーを使った公文書管理では、予算算定から執行伺、契約請求へと事務が進む中で、同じ文書の複製やバージョン違いのファイルがフォルダにたくさん蓄積されます。最終版は文書管理システムや財務会計システムに登録されますが、元データはストレージに残り続け、手作業での管理に委ねられます。"ルールに則り廃棄した"はずのファイルと同じものが残存するなど、ガバナンス上のリスクが常態化していました」
こうした課題を解決するためにServiceNowとBoxを活用して開発した「共通公文書管理サービス」では、案件を識別する「案件ID」と、組織やユーザー、文書分類など共通属性を定義する「共通マスタ」を軸に公文書を一元管理・活用する仕組みの導入を検討しています。

従来のように職員がファイルサーバー上でフォルダを作成して文書を保管するのではなく、ServiceNowで1つの業務を「案件」として登録し、関係者やタスクを紐づけたうえで「案件ID」を発行します。すると、API連携によって対応するフォルダがBox上に自動作成され、案件ごとに公文書を適切に管理できます。また、Box上の公文書には案件ID・グループID・チームID・文書分類・書誌情報などのメタデータが自動付与されるため、必要な情報を効率的に検索・活用することが可能です。さらに、自動バージョン管理や共同編集の機能によって複製ファイルの発生を抑制することもできます。これらにより、情報管理にかかるコストや事務処理ミスの削減、関連情報を俯瞰した適切かつ効率的な意思決定、従来の方法では見出せなかった新たな価値の発見・創出につながることが期待されています。
「文書やコンテンツなどの非構造化データをそのまま保管するだけでは、検索性の面などで限界があります。メタデータを付与すれば、人が必要な情報を探しやすくなるだけでなく、AIにとっても情報を抽出しやすい環境を構築できます。人にもAIにも優しい情報管理基盤を整備することで、より正確な情報活用や、AIが誤った情報を生成するリスクの低減につなげていきたいです」

大阪市がServiceNowとBoxという2つのSaaSを組み合わせるアプローチを採用した背景には、特定業務向けの個別システムを構築するのではなく、全庁的に水平展開できる高機能かつ汎用的な基盤を整備したいという考えがありました。また、内部管理業務のDXを実現するためには、構造化データと非構造化データの両方を適切に扱うことが不可欠だと判断しました。
AI時代を見据えた情報管理基盤の構築へ
大阪市のバックオフィスDXで特徴的なのは、プロジェクトチームのチームリーダーを副市長が務め、デジタル統括室長、総務局長、財政局長、契約管財局長、会計室長などの幹部に加え、課長級WG、係長級WG、個別検討WG、さらに事業者も含めてワンチームで取り組みを進めた点です。
通常こうした行政DXの取り組みを進めるうえでは、DXを推進するデジタル部門と制度を所管する部門の間で意見がぶつかることも少なくありませんが、今回のプロジェクトにおいては、公文書管理を取り巻く課題認識を両部門で共有できたことも大きかったと坂部様は振り返ります。
「文書管理システムは稼働開始から約20年が経過し、再構築の検討時期を迎えていました。また、電磁的記録である公文書の管理に関する考え方と現行のシステム・環境の間にずれがあるという指摘もありました。こうした中、行政DXの進展を踏まえ、公文書管理のあり方を電子ベースで見直す必要があると考えていたタイミングでバックオフィスDXプロジェクトが立ち上がり、方向性が一致しました」
縦割りになりがちな行政組織の中でプロジェクトをスムーズに前進できた要因としては、 強いリーダーシップを持つ幹部が各部門との調整を担ったこと、実際に行政事務を担う原課部門と問題意識を共有できたことも大きかったと言います。共通公文書管理サービスの運用開始にあたっては、従来のファイルサーバー中心の運用から、BoxのWeb版を活用した運用へと大きく変わることになるため、トップダウンとボトムアップの両軸で丁寧な説明を行いながら現場職員へ浸透させていきたいと言います。
今後のプロジェクトの展望について、有本様は、AI活用を前提とした情報管理基盤の整備が重要になると語ります。
「今回の新しい基盤を開発したことで、大阪市でも“AIレディ"の環境が整いつつあります。今後はAIを前提としたデータ活用戦略をしっかりと定め、こうした仕組みを全庁的に水平展開していきたいです」
一方、坂部様は、公文書管理制度そのものの見直しも重要なテーマになると説明します。
「AIの活用やシステム連携を進めるうえでも、そこで扱われる情報は基本的に公文書です。公文書管理制度は紙を前提に発展してきた制度ですが、そもそも電磁的記録としての公文書をどのように管理していくべきかを改めて考え、制度とシステムを一体的にアップデートしていきたいと考えています」
本セッションでは、大阪市におけるバックオフィスDXおよび共通公文書管理サービスの取り組みを通じて、組織横断で行政DXを推進するための実践と、その中でのAI活用を見据えた情報管理基盤のあり方について議論が行われました。
本セッションの全編は、BoxWorks Tokyo 2026のサイトでアーカイブ視聴いただけます。(6月24日~7月31日)
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