BoxWorks Tokyo 2026のDay1の午後は、ユーザー企業様のBox活用事例やAIとコンテンツの活用につながる45を超えるセッションが開催されました。
その中から来場者からの反響が大きかった「MicrosoftとBoxが描くAIエージェント時代の安全な情報基盤」をピックアップして、講演内容をお伝えします。本対談では、MicrosoftとBoxが、AIエージェント時代のセキュリティとガバナンスの本質に迫りました。
AIエージェント実装元年 ― いよいよ本番のセキュリティ対策
日本マイクロソフト株式会社(以下、Microsoft) 技術統括室 チーフセキュリティオフィサー 河野 省二氏と、株式会社Box Japan 専務執行役員 安達 徹也による対談形式のセッション。安達は冒頭、今年のBoxの戦略を語りました。「今年は『AIエージェント実装元年』。Boxは、2024年からAIに関する機能を充実させてきました。今年はお客様と共にAIエージェントを実装していく年になります」
日本マイクロソフト株式会社 技術統括室 チーフセキュリティオフィサー
河野 省二氏
AIの活用がPoC(概念実証)から本番実装へと移行するにつれて、セキュリティへの関心が急速に高まっています。その証左として、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出で3位にランクイン。安達は「私たちメーカーだけでなく、IPAのような団体もAIのセキュリティを注視していることがわかります」と述べ、AIエージェントのセキュリティ対策の重要性を強調しました。

生成AIとAIエージェント ― 求められるデータ構成の違い
セッションでは、まず「生成AI」と「AIエージェント」の本質的な違いを整理することから始まりました。
河野氏は次のように説明します。「生成AIの時代のデータマネジメントやセキュリティは、皆さんが目に見える範囲でできていました。しかしAIエージェントは、皆さんの代わりにさまざまな情報を使って判断をして、その判断の結果何かを生み出していく。この判断の繰り返しになります」
AIエージェントが活用するのは単なる「コンテンツ」ではなく、「ビジネスインテリジェンス」。組織の中にあるデータがどのように使われているか、どう生まれたのか、そうした「コンテキスト」が積み重なることで、AIエージェントの判断精度が高まります。河野氏は「このビジネスインテリジェンスの部分を、皆さんが心配されるようなものを生まない、質の高いものにしていかなくてはいけない」と指摘しました。
AIエージェントを安全に動かす2つの柱 「コンテキスト」と「ガバナンス」
安達は、AIエージェントを安全かつ効果的に活用するために必要な概念を2つに整理しました。
- コンテキスト:AIが正しい判断をするために、正しい情報が得られる情報基盤になっているか
- ガバナンス:AIがちゃんと正しく動作するか、その行動を統制・管理できているか

河野氏はこの整理に賛同しつつ、床屋のたとえを用いてわかりやすく解説しました。「僕が理容師さんに言うこと(指示)と、理容師さんの技術(AIモデルの能力)、この2つに分けて考えることがとても重要なポイントです」。AIに渡す情報(コンテキスト)と、AIを動かす統制(ガバナンス)は、それぞれ独立して考える必要があるというわけです。
安達は、「AIの効果最大化のためのコンテキスト、AIのリスク最小化のためのガバナンス、両方が必要」とまとめました。
AIに渡す情報を整えるのに必要なこと
AIエージェントのデータに必要な3つの「S」
BoxはAIエージェントに渡す情報の品質を担保するために、「3つのS」を提唱しています。

- セキュリティ(Security): エージェントが必要最小限の情報にのみアクセスできているか。アクセスしてはいけない情報にアクセスしていないか
- ステータス(Status): ドラフトなのか最終版なのか、承認済みかどうかというステータス管理
- 鮮度(Sendo): 新しい情報か古い情報か。AIが古い情報をもとに判断・行動しないようにする
安達は「この3つがきちんと管理されていないと、AIは間違った情報、承認されていない情報、古い情報をもとにアクションを取ってしまう」と指摘しました。
メタデータ活用による検索精度の劇的改善
Box Japanのコンサルタントが実施した検証で、Boxのメタデータ機能を活用することで、AIエージェントの検索精度が劇的に向上することが確認されました。
たとえば、「1億円未満の契約書」というキーワード検索では、AIが解釈の余地を持ってしまい、意図しない結果が返ることがあります。一方、Boxのメタデータを使って「金額=1億円未満」「ステータス=承認済み」「文書タイプ=契約書」という3つのフィルターをかけることで、検索結果の乖離が劇的に改善されました。
河野氏も「Windowsサーバーの中にそのまま置いてあるファイルでAIに使えるものは1個もない」と断言。特に、Excel方眼紙のようなフォーマットは、目では見えても「データ構造としては何の意味もない」と指摘し、ファイルの管理方法そのものを見直す重要性を訴えました。
マルチAIエージェント環境における統制設計
企業のAI活用が進むと、複数のAIエージェントが連携するマルチAIエージェント環境が必然的に生まれます。安達はBoxが得意とする領域を「非構造化データ(画像・動画・Word・Excelなど)とそれに関するAIエージェント」とした上で、構造化データや外部情報を統合するオーケストレーション層はMicrosoftが担うという役割分担を話しました。
マルチAIエージェント環境では、以下のリスクが生じます。
- 乱立・放置すると統制が効かない
- 他社エージェント連携で権限境界を越える恐れ

河野氏はMicrosoftの対応策として、AIエージェントを「人間と同じように」扱うアプローチを紹介しました。「いつ、どこで、誰が何をしたかということが重要なので、AIエージェントの行動もすべて記録されていく仕組みが必要です」。さらに、Microsoft Defenderが「変なプロンプトを出したようなAIエージェントをウイルス扱いしてブロックする」機能を新たに搭載することも明かされ、会場の注目を集めました。
MicrosoftとBoxで実現する安全な情報基盤
MicrosoftとBoxの連携は、以下の3層構造で整理されます。

- コンテンツレイヤ(Box): AI-Readyなコンテンツ基盤。3Sによるメタデータ管理でコンテキストを整備
- エージェントレイヤ(Box + Microsoft): Box AIエージェントはBoxのセキュリティ・ガバナンス設定の枠組み内で動作
- コントロールレイヤ(Microsoft): Entra(ID・アクセス管理)、Defender(脅威検知)、Purview(コンプライアンス)、IntuneによるAIエージェントの統制・可視化
そして、MicrosoftとBoxを連携できる新機能が紹介されました。
新機能① Box AI Agent for Microsoft 365 Copilot
2026年3月、Microsoft 365 Copilot向けBox AIエージェントが強化されました。Box MCPサーバーを通じて、Teams、Word、PowerPoint、Copilot ChatなどのMicrosoft 365アプリケーションからBoxのコンテンツをリアルタイムに検索・発見・分析できるようになりました。さらに、Box APIコールおよびBox AI Unitsを非課金とすることで、より多くのユーザーが利用しやすい環境が整えられています。
新機能② Microsoft Copilot Cowork向け Boxプラグイン
Copilot CoworkとBoxの統合により、営業企画、資料作成、法務確認など、複数ツールをまたぐ業務をMicrosoft 365上でシームレスに実行できるようになります(まもなく提供開始予定)。Boxの権限・データ分類・ガバナンスを維持したまま、アクセス可能な情報だけをCopilot Cowork上で安全に活用できる点が特長です。
安達は「MicrosoftにするかBoxにするかという選択ではなく、両方を使っていただくことでガバナンスとコンテキストを両立できる。こんな世界を共に目指していきたい」と力強く語りました。
今後の展望とメッセージ
セッションの締めくくりに、河野氏は参加者へ向けてこうメッセージを送りました。
「まず今、Boxの中に入っているデータを見て、重複がないようにする。メールに添付してデータを送るのではなく、Boxの共有リンクを共有する。そうすることで、1つのデータに情報がたくさん乗ってくる。これが、これからのAI時代のコンテンツ活用・データ活用の役に立っていきます」
また、BoxのIDとMicrosoftのIDを連携させた統合ID管理を活用することで、ファイルの使われ方がコンテキストとしてよりリッチになり、AIの判断精度がさらに向上すると話しました。

AIエージェントの時代において、「どのAIモデルを使うか」という議論から、「AIに渡す情報の質をどう担保するか」という議論へと、企業の関心は確実にシフトしています。本セッションは、その本質的な問いに対して、BoxとMicrosoftという2社が具体的なアーキテクチャと製品連携で答えを示した、非常に示唆に富む内容でした。
コンテキストでAIの効果を最大化し、ガバナンスでリスクを最小化する。この2つの柱を両立させることが、AIエージェント実装元年を乗り越えるための鍵となるでしょう。
本セッションの全編は、BoxWorks Tokyo 2026のサイトでアーカイブ視聴いただけます。(6月24日~7月31日)
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